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翻訳者インタビュー

翻訳者 H.C さん

クイーンズランド大学卒
博士(翻訳理論専攻)

歯科、産科、苦痛緩和ケア、看護などの医学翻訳を得意とする。8歳の時から日本語を学び、大学卒業後日本での職業従事経験を持つ、英語と日本語のバイリンガル。日本の永住権を持つ。

まずは、専門分野を教えてください。

一般的な医学翻訳を専門としています。中でも歯科、産科、苦痛緩和ケア、看護などに精通しており、それが私の強みです。

どうして翻訳者になろうと思ったのですか?

小学生の頃から日本語の学習をしており、日本語の持つ響きや文法に強い魅力を感じていました。また、私の母国語である英語で作文を書くのも得意でしたので、進路を考え始めた高校生の頃から、英語と日本語の2つの言語を扱える翻訳者が自分に向いているのではないかと考えるようになりました。それ以降日本に対する思いは強まり、大学卒業後にワーキングホリデーとして来日するほどになりました。日本滞在中は、スキー場のフロント係やアイスクリーム屋の店員、高校教師のアシスタントなどあらゆる職業につき、日本語を駆使することとなりました。その間ネイティブの日本語に触れられたのは、とても良い機会でした。その後、日本語翻訳・通訳の本格的な勉強をするため大学院に進むことを決意し、4年間過ごした日本を離れオーストラリアに戻りましたが、自分には日本がよほど合っていたのでしょう。日本が恋しくなり、大学院卒業後すぐに日本に戻り、永住することを決めました。日本での職業訓練の甲斐があり日本語もネイティブ並みに扱えますので、日英翻訳・英日翻訳のどちらも不足なくこなせる翻訳者になれたと自負していますし、第二の故郷・日本での暮らしに心から満足しています。

翻訳スキルをどのように磨いていますか?

日本に永住し、家庭も持っていますので、日本語は日常的に使っています。話す力は備わっているので、読む力・書く力を鍛えるために日本語の新聞や書籍を欠かさず読んだり、一日あったことを必ず日本語で日記につけるようにしています。 また自身の専門領域に対しても、ネットニュースやオンラインジャーナルを購読することで知識を深める努力をしています。さらにただ読むだけでなく、知識としてしっかりと定着させるため、医療に従事している兄にその内容を話して聞かせるということもしています。

いままで翻訳してきたなかで一番印象に残っている案件はなんですか?

印象に残っている翻訳は、大学の学部生の頃に携わった、短歌を英訳するという案件です。短歌の持つ空気感・世界観を壊さぬよう英訳するというのが非常に困難で、時に深く悩まされました。ですが、日本語の美しさ、表現の幅広さを存分に知ることができ、それ以来短歌に魅了されました。今でも短歌の翻訳を続けていますし、短歌を詠むことも自身の趣味として楽しんでいます。

翻訳をする際に気をつけていることはなんですか?

気をつけている点はたくさんあるので、書きつくせないほどです。常々興味深く感じているのは「和製英語」についてです。和製英語とは、日本で作られた英語風の日本語語彙のことを言います。例えば、英語で"smart"は人が知的な様子であるのを表現するのに使いますが、日本ではもっぱら体型がスリムであることを指します。本来は"slim"と言うべきところを"smart"と言う、それが和製英語です。どうしてこのような和製英語が出来たのか?それを調べだすと、その奥深さに唸らずにはいられません。前述の"smart"のように、和製英語をそのまま英訳すると意図が伝わりにくくなることが多々あるので、翻訳の際はそれに引きずられないように留意しています。

どのような翻訳者になりたいと思いますか?

翻訳スキルを常に磨き続けていきたいです。そして、文章や単語の背後にある書き手の意図やニュアンスを敏感に察知し、それを忠実に翻訳できる翻訳者になりたいと考えています。

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