ニュージーランドの最難関校
オークランド大学大学院卒 理学修士
専門は微生物学、ウイルス学・応用生命科学など。 医学ライターや大学の実験指導員として勤務するかたわら、2003年から英語論文のネイティブチェックに関わるように。
大学では海洋環境学と養殖業についての論文を書きました。大学卒業後は医学出版社のライターになり、医学の研究開発に関する記事を大量に書いたり編集したりしました。その後、英語ネイティブではない研究者の医学論文のネイティブチェックを行うようになって、今に至ります。最近は大学院に戻って分子微生物学の勉強もしています。
的確なネイティブチェックを行うには、論文の意味や内容が理解できるというだけではなく、隣接分野の論文との関連性を把握できるほどの専門知識を有していることが大事です。専門知識がないと、論文の方法論が結果を導き出すために最適かどうかを判断することができません。それに対してライティングでは、質を問わなければネイティブチェックほどの深い専門知識や経験は必要ありません。しかし、このネイティブチェックとライティングのスキルは補完的に作用します。医学ライターは専門知識が深まるとネイティブチェックの仕事もできるようになりますし、校正者として身に付けた基礎的なスキルは執筆作業で活かせます。
医学という学問は幅が広くて奥が深いため、医学領域すべての専門家にはなれません。医学校正者は自分の専門を一つか二つの科目に絞ることになります。しかし、医学の技術の進歩も急速なので、専門を絞りつつも周辺知識も熟知しなければなりません。十分な周辺知識を備えていないと、原稿のすみずみまできちんとネイティブチェックすることはできません。専門性の高い論文をネイティブチェックする場合は、私は普段より多く繰り返し熟読するようにしています。それから別紙に論文の重要点をメモしておいて、原稿が論理的に順序立っているか、読者にとって内容が明確で科学的に正確であるかを点検しています。
ほとんど直感的なプロセスですよ。混沌としたものを順序立てる作業とでも言えばいいのでしょうか。私はまず、あるテーマに興味を抱くようになると、その関連の文献を読みあさります。十分な知識を得たら、研究の計画を立てます。論文執筆の最初のステップはデータ収集ですね。その次は、その情報を論文のどの部分に取り入れるかを決める作業。この作業では、各情報のキーワードやポイントをカードに記しておいて、それぞれのカードをカテゴリーごとにまとめます。全情報をカテゴリー別にまとめたら、それぞれを順序よくアレンジして、第1稿の執筆を開始します。
一つの段落に複層的な情報を盛り込むのではなく、一つの段落では一つのトピックだけを書くことが読みやすい論文を書くコツです。そして、要点は段落のはじめに書くべきです。論文全体に一つの論点が通底していることが大事で、それが人類の進歩に貢献するような新しい発見を論じるものであればすばらしいですね。