複数分野を包含し、複雑なフォーマット調整を必要とする2年間の長期書籍翻訳プロジェクト
23章からなる本書はマクロ経済学、生物学、数学といった異なる分野の内容から構成されていたため、翻訳を行うにあたっての大きな課題は、各分野の専門性を保つために複数人の翻訳者で翻訳をしながら、書籍としての一貫性を保つことができるのか、という点でした。
通常、翻訳内容の一貫性を保つために、専門用語の訳し方を定める対訳リストをクライアントからご提供いただくことは必須です。ところが、記述的な書籍であることもあり、お客様から対訳リストをご提供いただけませんでした。
翻訳した原稿をオリジナルの原稿と完全に同じフォーマットに整えることもお客様からの強いご要望でした。ところが、オリジナルの原稿は、PDF。しかも無数の方程式や図表が含まれており、簡単に調整できるものではありませんでした。さらにオリジナルの原稿には、日本語だけではなくローマ字、ギリシャ文字が含まれていました。お客様からは特定のフォントで置き換える指示をいただき、これを順守する必要がありました。
書籍が複数の分野にまたがっていることから、各分野に精通した翻訳者を慎重に選ぶ必要がありました。加えて、リード翻訳者、リードレビュアーを別にアサインし、各翻訳者が分担して作成した翻訳物について全体を見ながら統合することにしました。この体制は、書籍の一貫性を担保するために必要でした。
リード翻訳者が率先し、全体を網羅した対訳リストを作成しました。お客様にも事前にご確認いただき、ご要望は反映したうえで、関係者全員と共有。書籍全体の統一感を持たせることに非常に重要な役割を果たしました。
単に対訳リストを共有することにとどまらず、社内で開発した対訳リストのチェックツールも活用しました。なぜなら、リストに列挙された用語はかなりの数であったため、目視で確認するだけでは、見逃す可能性が高かったからです。このツールにより、100%完璧に用語を統一することができました。
今回の成功を導いたのはプロジェクトマネジメントチームの体制とプロジェクトマネージャーの姿勢によるところが大きいと考えています。特にプロジェクトマネージャーは、当案件の始めから終わりまで積極的にお客様の要望を理解するよう努めました。さらに、日本人のアカウントマネージャーも間に入ることで、お客様との日本語での会話を通じ、ニーズを把握。英語でグローバルチームとの橋渡しを行い、スムーズに意思疎通を行いました。
プロジェクトの計画と進捗管理もまた、重要な要素でした。お客様も細かく確認し、意図を正確に反映することを望んでくださったため、章ごとに納品し、納品物に対する修正のご要望を反映、先方の承認をもって納品完了というサイクルで翻訳を進行しました。このことで、章を追うごとに翻訳の質は劇的に上がり、結果として、お客様の意図を正確に反映しながら、ネイティブレベルの読みやすさも備えた翻訳を実現することに成功したのです。
複雑なフォーマット調整についても対応できるよう社内でスタイルガイドを作成し、お客様から事前に承認を得て、関係者間で共有しました。このスタイルガイドに沿って調整をすることで、オリジナルの書籍と全く同じ体裁に整えることができました。
最終章の納品後に全編を通してさらに編集を行い、お客様にご確認いただきました。加えて、ファイナルレビュアーによる最終確認フェーズも取り入れ、些細な点まで気を配りながら、言語面、体裁面での微修正を行い、完璧な状態に仕上げました。
納品を終えても私たちの仕事は終わったわけではありません。2年もの間、チームとして一緒に書籍を作りあげてきたのですから、納品後も先方に少しでも困ったことがあれば、いつでもサポートすべきだと私たちは考えています。それがたとえ既定のルールを超えたものであったとしても、クライアントの期待値を超える。それが私たちの仕事だと思っています。
お客様のコメント 熨斗 一存様この度は、私の要望を受け入れ、正確で質の高い翻訳を実現してくださり、ありがとうございました。ユレイタスのみなさまの尽力に感謝いたします。
今回の出来栄えと効率のよい仕事ぶりを拝見し、今後もずっとユレイタスを利用しようと思いました。今は、学会発表用の論文を執筆しており、そのうち英文校正や別稿の翻訳をお願いすることもあろうかと思います。そのときはまたぜひよろしくお願いします。
これほど長期にわたり、また、これほど複雑な案件にお付き合いくださり、ただただ感謝しかありません。本当にありがとうございました。