翻訳者と翻訳支援ツールを効果的に組み合わせ、
200万文字以上の医薬系文書をわずか15日間で翻訳
翻訳対象のファイルは、米国の規制当局による許認可審査のために使われるものでした。翻訳ファイルの依頼主である製薬会社では、緑内障を治療する薬品を開発・販売しており、日本の協力者による追加研究によって、この薬品が別の網膜疾患にも効果のあることがわかりました。このデータは日本語のみで入手可能であり、お客様が米国で認可を受けるためには、すべてを英語にする必要がありました。製薬会社から翻訳の依頼を受けたEcho International様は、200万文字という大型かつ専門性の高い翻訳を短納期で仕上げるため、ユレイタスへの協力を求めていました。 翻訳対象ファイルは、安全性対象解析集団・有害事象報告書・臨床検査値・薬物血中濃度報告書・網膜色素変性症の遺伝子研究・網膜色素変性症に対する局所的ウノプロストンの効果・新薬申請のための事前協議・臨床研究・プロトコル・症例研究などに関するものでした。内容は非常に専門的で、大量の医薬系の用語を含んでいました。これらの文書に対して、正確な翻訳を行う必要がありました。
大量の文字数の翻訳を短期間で完成させることが求められていましたが、スキャンされたファイルや手書きファイルを取り扱い、さらにお客様から翻訳文を原文と同じレイアウトにするようにとのご要望があったため、多くの手間がかかります。さらに、多数の翻訳者を管理し、翻訳支援ツールを使用しなければなりませんでしたので、多数のファイルに対する飜訳メモリーを管理する必要がありました。そこで弊社では独自にプロジェクトマネジメントチームを編成し、それらの課題に取り組みました。
弊社の翻訳者データベースから、医薬系翻訳において豊富な経験を持つ翻訳者10名を厳選しました。お客様にご満足いただくため、翻訳者たちの経歴もお客様にお送りし、たいへん高い評価をいただきました。
より迅速な作業を可能にし、複数のファイル間で用語などの一貫性を保つため、TRADOSを使用しました。プロジェクトマネージャーの管理のもと、専門知識を持つチームが各ファイルの翻訳メモリーを注意深く照合し、各分納分のファイルについて最新の翻訳メモリーを用意しました。それにより用語の統一性を保ち、作業の効率化につなげることができました。またお客様のご要望に合わせたレイアウト調整を容易にするために、翻訳過程において使用されるテンプレートを独自に用意し、翻訳者に提供しました。
お客様からは当初、翻訳のみという作業依頼をいただいておりましたが、弊社では納品前に独自の品質チェックの工程を組み入れ、日本人の担当者が翻訳原稿の正確さと一貫性を入念にチェック。すべての数字が原文と一致し、訳文の漏れがないかも確認しました。お客様に喜んでいただきたいという強い思いから、200万文字という大量の翻訳を15日間で完成させ、無事お客様へ納品することができました。お客様からは、翻訳文の品質への高い評価をいただきました。現在このお客様からは、定期的に翻訳のご依頼をいただいております。
お客様のコメント Echo International様精度の高い医薬系文書の翻訳ということで、優秀な翻訳者を大量に確保できるユレイタスにお願いしました。その際には翻訳者の経歴も送っていただき、依頼する側としても大変心強く、安心して任せることができました。非常にタイトな案件でしたので、期日内には難しいかなと正直思っていましたが、わずか15日で、しかもこちらが予想していた以上にクオリティの高い原稿で仕上げていただき、本当に助かりました。今後ともよい協力関係を築いていきたいと考えています。
このプロジェクトを成功させる上で、ユレイタスにとって最大の課題は何でしたか。また、その課題をどのように解決しましたか。
最大の課題は、この膨大な文字数の翻訳を15日間で完成させることでした。私はユレイタスのプロジェクトマネージャーとして2年間勤務していますが、このように厳しい納期でこれだけの量の翻訳、というのは初めての経験でした。この課題を解決するために、今回のプロジェクトに必要な技術を持つ専門チームを編成し徹底した作業の効率化をはかりました。弊社では、すぐれた翻訳者はもちろんですが、TRADOSなど翻訳支援ツール用のファイルを管理する専門家を有しており、この専門家たちが、各ファイルの翻訳が仕上がるたびにファイルを統合していきました。手書き部分を翻訳する必要があり、翻訳支援ツールではなく専用のテンプレートを使用しました。このようなファイルのチェックには、日本語を第一言語とする担当者があたりました。結果的としてこの記録的なプロジェクトを成功裡に完了できたことを誇りに思います。
薬学を専門とする翻訳者を採用する際に、どのような技能を求めていますか。
薬学は学際的な分野です。翻訳者には、関連する教育を受けていることと、翻訳経験が求められます。また、TRADOSのような翻訳支援ツールに精通している必要があります。有害事象報告書のような文書には、文書中に繰り返し出てくる部分がたくさんあります。このような文書を最適なかたちで翻訳するためには、翻訳支援ツールを使い慣れている必要があります。今回も弊社のデータベースの中からこれらの条件を満たす多くの翻訳者を厳選し、作業にあたりました。
翻訳者を管理する際、どのような問題がありましたか。
10名の翻訳者が厳しい日程で作業していたため、翻訳対象原稿全体を分割し、それらを各翻訳者たちに割り振る必要がありました。しかし各翻訳者が互いにばらばらの用語を設定し勝手に翻訳を行えば、後でそれらを統合した際に訳語にずれが生じます。そこで案件全体における用語の一貫性を保つため、各翻訳者が用語集を作成し、互いに持ち寄り定期的に更新するようにしました。すべての翻訳者が厳密にこの用語集に従い作業を行ったため、こうした課題をクリアすることができました。
このプロジェクトから何を得ることができましたか。
このプロジェクトによって、翻訳者と翻訳ソフトウェアを効率的に結びつけて作業をすることの大切さ、またその作業をする上で大切なことをたくさん学びました。その結果すぐれたプロジェクトマネジメント戦略と協同作業があれば不可能はない、という確信を得ることができました。