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私が英語の面白さに目覚めたのは、大学紛争のおかげです。大学に入ってすぐ、学園紛争で2年くらい講義がなくて、仕方なく物理や数学や化学の教科書を一人で読んでいたのですが、全くわからない。ところが英語の教科書を読んだら、スラスラわかった。それに英語が実に簡単なんでえらくビックリしたんです。理系の英語の教科書は理論がはっきりしているし、ちゃんとステップを追って書いてあるから理解しやすい。とくにファインマンの「Lectures on Physics」は英語で3巻もあるのに、物理の世界とはこういうものかと非常によくわかって感激しました。 高校の英語副読本はまるで歯が立たなかった。だって、バートランド・ラッセルなんて読ませられたんですよ。大学の英語だってジョイスとシェークスピアだから、分かれというほうがおかしい。私が思うに、文学系の人たちが英語を教えているから問題なんですよ。文学や哲学なんて日本語で読んだって私には解釈できないんだから、情緒も何もない、「1たす1は2」みたいに“すっきりくっきりこれっきり”って理論がハッキリしている理系の英文を、どうして初等中等教育でもっと教えてくれなかったのかと腹が立ちました。 |
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大学時代には、内村鑑三系のキリスト教の寮に入りました。学園紛争の時代だし、寮なぞに入ったらやっかいなことに巻き込まれるのではと親は心配だったようですが、内村鑑三系なら問題ないだろうということで。清く正しい寮でしたね。私は1日30ページずつ読めば旧約・新約聖書が1年で読み終わると目標を作って、読み通しました。次はルター聖書も、といってドイツ語を勉強し、しまいには聖書の原典を読もうといってギリシャ語も勉強したりして、クリスチャンでもないのに聖書の勉強はよくしました。それと同時に、鈴木大拙の禅の本なども一生懸命読んで、座禅に行ってガンガン叩かれたりもしていました。こうして東西の思想の違いをしみじみ体感しました。 西洋の考え方の下敷きになっているのは、キリスト教とギリシャ哲学です。西洋のサイエンスは「真理」を追究するものだけれど、「真理は一つである」というのが基本的立場。なんでも一つの単純な真理に還元してしまったほうがいいという考え方がある。これはもう、一神教的発想以外の何者でもないでしょ。こうしたことに気づかせてくれたのも、私が聖書を熟読していたおかげです。 |
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スシは、生の魚を切って一口大のご飯の上に載せただけの料理です。なんのレシピもない。でも、スシ職人の魚の切り方ひとつ、シャリの握り方ひとつで、味は大きく左右されます。しかし、日本の職人は表立ってプロの技を主張しない。職人は一歩退いて「材料そのものに語らせる」という姿勢です。一方、アメリカンフードの代表格・ハンバーガーやフランス料理などは、これでもかと具を積み上げたり、具をこてこてに調理したりします。フランス料理のシェフなどは勲章をかけて偉そうな顔をしてしゃしゃり出ます。フランス料理は材料は従で、料理人の腕が主役。シェフが饒舌に語る料理と言ってよいでしょう。 サイエンスも、これによく似ています。日本のサイエンスは結果重視で、精度の高いデータを提出して、それに語らせる。英語論文のフォーマット上、結果のあとにくる「ディスカッション」なんて、「結果が出ているのに、これ以上何を議論すればいいのか」と困る日本人研究者はいっぱいいる。一方、西洋のサイエンスは結果より議論を重視します。事実は単なる事実でしかなく、それらから導かれる理論(イデア)を重視する。たったこれだけのデータで、よくまあ、こんな壮大な仮説を打ち出すものだなあとあきれるような論文もけっこうありますよ。 ハンバーガーサイエンスには、結果を軽視して空理空論に陥る危険性がある。一方、大きな仮説を立てることを避けがちなスシサイエンスは、普遍的な理論を出しづらく、ともすれば新しくて斬新な方向に科学を推し進めていくエネルギーに乏しい。科学者には、科学とはどういうものかということをいつも問うていく姿勢がなければいけないし、サイエンスは多様であり、どのサイエンスにも長所と短所があるということに対して、自覚的である必要があるのではないでしょうか。 |
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1948年、宮城県仙台市生まれ。71年東京大学理学部卒。理学博士。琉球大学助教授、アメリカ・デューク大学客員助教授を経て、現在は東京工業大学教授。ナマコ、ヒトデ、ウニなど棘皮動物の専門家。「ゾウの時間 ネズミの時間」(92年、中公新書)がベストセラーとなり、同書で講談社出版文化賞を受賞。ほか「歌う生物学」(93年、講談社)、「おまけの人生」(95年、阪急コミュニケーションズ)など著書多数。また、理科教育を親しみやすいものにしたいという思いから、「運び屋血液」「タンパクのタンゴ」など生物学をテーマにしたユニークな歌を作詞作曲し、自ら歌って発表する音楽活動でも知られる。音楽家としての仕事は、CD「ゾウの時間 ネズミの時間~歌う生物学」などに収められている。 |