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私は理学博士ですが、もとは京都大学の文学部哲学科の卒業です。大学では山岳部に入って、年間120日くらい山登りに明け暮れていました。私の最初の英語体験は、大学4年のときに30人のヒマラヤ遠征隊の一員として行ったインド・ネパールです。人生で英語を最初に使ったのが、夜のニューデリーでした。まあ、普通の平均的な日本の大学生ですから、たいしてしゃべれない。インドの人が大挙して押し寄せて口々にわめいていたけど、何を言っているのかわからなかった。 ヒマラヤから帰って、大学院入試に向けて英語で書かれた哲学の原書を熟読しました。当時の京大・大学院の英語の入試問題はめちゃくちゃ難しかった。辞書の持ち込みは不可。西洋哲学史の3巻本をほぼ丸暗記したのに、試験問題を一読してわかったのは、それが英語だということと(笑)、スピノザという人名だけ。「ザーイズム(theism)」と「ア・ザーイズム(atheism)」という何度も出てくるキーワードがあって、これがわからないと解けない。でも私の人生の中でそういう単語に出会ったことがない。何度も何度も読むと、行間からじゅわーっと意味が見えてきました。じつは「シイズム」という発音で、答えは一神教と多神教だけど、多分そうだろうと文脈から理解しました。 哲学の英語なんて、丸暗記してもわからないです。哲学は非常に論理が込み入っているから、「読み解か」なければいけない。科学の論文も論理的だけど、すごくシンプルですよね。二十代のはじめに哲学のテキストを読み解く訓練を積んだことは私の英語の基礎体力を鍛えたし、この経験に比べれば科学の英語論文を読んだり書くことはどうということもなかったという気がします。 |
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アイの論文を発表したあと、30歳代半ばに丸2年、アメリカのペンシルベニア大学に留学し、「心の理論」研究の創始者として高名なデイビッド・プレマック先生という心理学者に師事しました。学識が深い先生は、私の英語がまずくても、一を言えば十を理解してくれた。先生との論議に思い悩んで夜も眠れないときもありましたが、それは英語の表現が出てこないというより、あのとき先生にああ言われたけど、もっとこう切り込めばよかったとか、自分はこれを言いたかったんだという、学問の正味のところでの「身もだえ感」のほうが大きい。 英語にまつわる恥ずかしい体験は、日常生活にあります。子供たちをつれてアイスクリームスタンドへ行って、バニラが買えなかった。Vanilla、ヴァナイラってうまく発音できなくて。また、私の住んでいたフィラデルフィアの郊外の町からニューヨーク・マンハッタンのコロンビア大学に手紙を出すときに、郵便局で「Manhattan」が通じなくてね(笑)。でも、これは自分の発音の洗練が足りないだけであって、知性に問題があるとはこれっぽちも思っていないから、それを気に病むことはありませんでした。 |
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サイエンスの競争は、英語学習のもっともっと先で起こっています。学問の世界で一番大事なのは、ユニークでオリジナルな実際の研究成果です。自分より英語のヘタな人は、アメリカ国内にだって掃いて捨てるほどいるよ。英語がヘタだということは何の問題もない。英語はヘタでもすばらしい研究をしていたらみんなが固唾をのんで聞いていますよ、耳を済ませて。よく学生にも言うけど、1篇でも論文を書いてから外国に修業しに行ったほうがいいよと。立派な論文が一本あるだけで、周囲の自分に対する耳の澄まし方が全然違う。 また、しっかりした目標をもつことも大事でしょう。その目標に向かって進めるだけの体力・知力を備えて、「弓」をぎりぎりまで引き絞って、そして、あるとき決然と出て行けばいい。私の場合は、最初に出て行ったインド・ネパールが、ヒマラヤ8000m初登頂というはっきりとした目標があった。あの未踏の山の頂上に行くんだと。そのために全知全能を注ぎ込む。今もそうです。チンパンジーがこの世界をどういうふうに見ているのかを知りたい。チンパンジーを丸ごと知りたい。人間を知りたい。目標がクリアであれば、英語でつまずいている時間はないですね。 |
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