研究者ネットワーク構築ガイド

博士課程の学生や若手の研究者の皆様であれば、「何を知っているかではなく、誰を知っているかが重要だ」というような、人脈の大切さを説く言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

知識やスキルが重要であることは間違いありませんが、強力な研究者ネットワークを持つことで、共同研究や資金獲得の機会が得られることや、キャリアアップへの扉を開くことができるかもしれません。この記事では、研究者ネットワークを構築するための実践的な戦略と、そのためのリソースについて紹介します。

1.所属する大学・研究機関での人脈を固める

強固な研究者ネットワーク構築の旅は、まずは自分の所属する場所から始まります。大学や研究機関は人脈の宝庫です。

  • 学科のセミナーや講演会に参加する
  • 専門分野に関連する学生団体に参加する
  • 学内の学際的イベントに参加する

このような活動に積極的に参加することで、最先端の研究について学ぶだけでなく、将来の共同研究者やメンターとなりうる同じ志の人々と出会うことができるでしょう。

2.SNSを活用する

今日においては、SNSほど人脈作りに適したツールはありません。

  • LinkedIn:役職や研究に関するプロフィールを作成し、研究に特化したグループに参加する
  • X:同じ分野の研究者や研究機関をフォローし、学術的なチャットに参加する
  • ResearchGate/Academia.edu: 自分の研究を共有し、他の研究者とつながる

単にアカウントを作成するだけでなく、見識を共有し、質問し、ディスカッションに参加することで、より中身のある関係を築けます。

3.カンファレンスやワークショップに参加する

カンファレンスも人脈作りに欠かせません。

  • 研究についての「エレベーター・ピッチ」を準備する
  • 交流イベントやポスターセッションに参加する
  • 知らない人々にも積極的に声を掛けて交流する

多くのカンファレンスでは、学生ボランティアの募集が行われているため、そうしたボランティアに応募するのも人脈作りのきっかけとなるでしょう。

4.専門的な学会のメンバーとなる

各分野の学会の会員になることは、人脈づくりにおいて大きなメリットとなります。

  • 会員名簿にアクセスする
  • 特定のテーマを研究する部会に参加する
  • 会議やワークショップに特別料金で参加する

学生会員に対して、会費の割引を適用する学会も少なくないでしょう。

5.プロジェクトで協力する

共同研究は、研究を進めつつ、より深いつながりを築ける絶好の機会です。

  • 自分の研究テーマが共通する研究者に接触する
  • 複数の大学・研究機関が共同で行う研究プロジェクトに参加する
  • 学際的な共同研究も視野に入れ、異なる分野の研究者にもアプローチする

6.指導教官のネットワークを活用する

大学院生を指導するような立場にいる研究者は、長年にわたる研究で築き上げた広範なネットワークを持っている蓋然性が高いです。恥ずかしがらず、共同研究者やメンター候補を紹介してもらえないか相談すると良いでしょう。

7.研究コミュニティへの奉仕

「ギブ&テイク」の「テイク」の部分だけを考えていたのでは、真の意味での人脈作りはできません。自分が、何に貢献できるかも常に念頭に置きましょう。

  • 学会や学術誌の論文査読をボランティアで行う
  • 学部生を指導する
  • 学部内でセミナーや討論会を主催する

こうした活動は、他者の役に立つだけでなく、研究コミュニティにおける自分の名前の露出の機会にもなります。

8.研究者向けのオンライン・プラットフォームを活用する

アカデミックな人脈構築のためのプラットフォームも活用しましょう。

  • Piirus 共同研究をできる研究者を探す
  • Resercher: 関連論文や共同研究者を見つける
  • Mendeley: レファレンス管理を行いながら人脈作りをする

9.サマースクールやワークショップに参加する

専門分野の集中プログラムやワークショップは、ネットワーク作りの絶好の機会となります

  • 同じ年代の研究者や年長の研究者と有意義な議論をする
  • インフォーマルな環境で、打ち解けた関係を作り上げる

10.フォローアップと関係性の維持

ネットワークの構築は継続的なプロセスです。

  • 初めての相手にはフォローアップメールを送る
  • 面白いと思った論文著者や研究者に、自分の連絡先と感想を送る
  • メンターや共同研究者と定期的に会合を行う

研究者ネットワークの構築には時間と労力がかかりますが、 その価値は十分にあります。対面での交流とオンラインで多くの研究者たちと出会い議論や対話を重ねることで、研究キャリアを通じて自分を支えてくれる多様性のある強固な ネットワークを構築できます。

効果的なネットワーク作りとは、名刺やアドレスを交換するだけの表面的な人脈作りではありません。少しずつ、こつこつと、そしてしっかりと深い関係性を築いていきましょう。

研究者ネットワークの構築に終わりはありません。忍耐強く、多様な意見、考え、ものの見方に触れていくことです。好奇心を持ち続け、心を開いて、一歩踏み出すことを日頃から心がけましょう。今から築き上げる人脈が、将来の自分の大きな助けになるはずです。

そして、研究者ネットワークを作る上で、最も重要なのが研究論文の発表です。質の高い論文を、同じ分野の研究者たちが注目するジャーナルで出版できれば、自分の名前の認知度も自ずと高まります。日本語から英語への学術翻訳や、専門的な英文校正を上手く活用し、できるだけ効率的に多くの論文を発表することは、研究者ネットワーク構築の近道と言えるでしょう。

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